日本は経済のみならず、世界一の平均寿命を持つ、健康においても世界の大国となった。しかし、今、日本は21世紀に向けて新しい挑戦、つまり人類が経験したことのない高齢社会に向け、高齢者が生き生きと暮らせる社会づくりを目指さねばならない。健康日本21は21世紀における国民の健康寿命の延長を実現するための健康政策である。日本は世界に先駆けて新しい社会づくりを行うこととなる。
21世紀の超高齢少子社会を持続可能なものにするためには、外国や日本での健康づくりの成果を活用し、将来の病気や社会の変化を考慮して新しい健康政策を推進する必要がある。
健康を実現することは、元来、一人ひとりが主体的に取り組む課題である。自分の健康の意味とあり方を「発見」し、これを達成するための方法や資源を「選択」し、生涯を通じた健康づくりの「設計」を行い、これに基づいて自分の健康を「実現」するという過程が必要である。
一方、個人を取り巻く社会には、マスメディア、企業、非営利団体、職場・学校・家庭、保険者、専門家などの、健康関連グループがあり、制度、情報、商品、サービスなどの健康資源の提供を通じて、個人の健康の実現に大きく貢献することができる。また、社会の側から健康資源を用意するだけでなく、個人の選択のための情報提供を行っていく必要がある。健康関連グループの各構成主体は異なった特徴を持っているので、それぞれの利点を生かしながら連携し、個人を支えていくことが極めて重要である。
なお、この中で健康を実現する個人は、健康関連グループに対し、その機能を高めていくよう働きかけることもできる。また、健康関連グループの一員として、他者の健康の実現に貢献することができる。
つまり、健康日本21の理念とは、個人の力と社会の力を合わせて、一人ひとりの健康を実現することである。健康日本21を成功させるためには、個人と健康関連グループが、健康日本21の展望、理念、目的及びそれぞれの役割をよく理解し、取り組むことが必要である。
健康日本21の目的は、社会からみると病気や障害による社会的な負担を減らし、国民の健康寿命を延長して、活力ある持続可能な社会を築くことにある。また人の死を最終的に予防することが不可能である以上、病気予防の重点は早世に置くべきといえる。一方、個人からみると、早世と障害を予防し、生活の質を高めることによって、稔り豊かで満足できる生涯づくりを目指すことにある。
健康日本21の目的を社会全体として、あるいは個人の生涯という観点から達成していくためには、人生の段階別に課題を捉え、対策を講じていくことが必要である。健康の課題は年齢・世代によって異なっており、さらに人生の各段階の結果が次の段階、あるいは最終的な結果に影響を及ぼすからである。